私は最強ビンボー女!

「もうダメだ・・・佐奈にお願いするしか・・・・・」

ぶつぶつ呟いている。


「青菜「今は青!!誰が聞いてるかわかんないだろ!?」


あぁ、そうだった。
頭の中ではいつだって青菜だったから・・・



「青、もしかして数学苦手なのか?」


「・・・・・・・・・・ああ。そうだよ・・・・・」


青菜はうぅっと呻いている。




「・・・教えてやろうか?」


「え?・・・・・数学?」


「ああ。」


「いいの?」


「ああ。」


「・・・やったぁ!!」



青菜は万歳をした。

そして俺ににっこりと笑いかける。




「ありがとう、陽!」






・・・・・その笑顔に赤くなる頬を、俺は俯いて隠した。


ホント、コイツには敵わなねぇな。





―陽side end―


―青菜side―



よっしゃぁ!!

陽が数学教えてくれることになったよ!!!


・・・・・・でも・・・・


なんで、俯いてんだろ?





・・・・・・・・・・・・うーん・・・・・


・・・・・・・ま、いっか☆





――それより・・・





「翼っ!ちょっといいか?」


「あー?」


なんてやる気なさそうな声・・・・・




「2人だけで、話したいことがある!!」


言った途端、翼がピンッと背筋をのばした。



・・・・・・え・・・・

なんでいきなり、そんなに嬉しそうなの!?



ってか・・・・・

なんで陽は睨んでくんの!?




もう意味わかんないよコイツラ!!!




「・・・・・・愛の告白でもすんの?」

ふてくされた様な声の主は・・・



ぷくぅっとふくれた桃榎だった。





え、なんか超可愛い!!!


・・・じゃなくて!!




「違う!!!翼、あんたの瞳のこと!!!」


その、瞳の翳りのことだよ・・・・・




「あー、ソレかぁ・・・」

翼はまた、やる気のない声を出す。


ちょぉ!?

さっきの背筋ピンッ!は、どこいった!?




「ソレかぁ・・・じゃない!!!ほらっ、行くぞ!」


私は翼の手を引き、強引に屋上から引っ張りだした。





――手を握っているとき、翼の顔がほんのり赤く染まっていることに、私は気付かなかった・・・・・・。










―青菜side end―





―杞憂side―




「で?敦はなんて言ってたんだ?」


広い理事長室に、不機嫌な声が響く。


男にしては高めだが、女にしては低め。

そんな声の主は・・・・・



「りお、落ち着け。うるさい。」

青菜には"りか先生"と呼ばれている男・・・りおだ。


今は完全にりお(男)モードだ。

長い金髪を下の方で1つに縛って、化粧も落としたようだ。

と、いってもコイツは元から中性的な顔立ちをしているから、薄くしか化粧をしていないが。



「うるさいとはなんだ!!俺はマジで不安で・・・」


「わかってる。それは、僕だって同じだ。」




敦め・・・・・・

僕らに何も告げづに、青菜ちゃん残して消えるとは、いい度胸だな!!




「・・・昨日、僕の携帯にかかってきた敦からの電話では・・・」





僕は、ギリッと歯軋りした。



「『けっこうヤバイ状況だから、青菜を頼む!りおと喧嘩すんなよ?海のことは、任せろ!』とのことだ。」

僕は苦々しげに敦の口調をまねる。


りおの顔はぐっと強張る。

「それだけか?何があったとか、どこにいるとか、何も無かったのか?」


「無い。だが、考えられるとすれば・・・敦は、海のいるところへ向かった、ということだろ。」



りおの顔はさらに強張る。


「じゃあ、敦は海の居場所を突き止め会いに行ったということか。俺らに、何も伝えずに。」



「そういうことだろ。」

僕は低く答える。




りおの拳が、ブルブルと震えている。
怒りのためだ。


僕はハァッとため息をついた。


「海が消えてから14年がたった。そして、敦は海の居場所を突き止めた。だから、海を追いかけて消えた。」


淡々と語る。

脳裏には、青菜ちゃんの笑顔が浮かぶ。



「青菜ちゃんは、また、残された。・・・一人になってしまった。だから、僕達は“とりあえず”青菜ちゃんを見守ろう。
それしか、今の僕達にできることはない。」


りおがチッと舌打ちしつつも、渋々頷いている。



――青菜ちゃんは、何も知らない。

知らされていないのだから、当然だ。


彼女は・・・・・何を思っているのだろう?




―杞憂side end―

―青菜side―



「うん!ここなら大丈夫!!」


「ここって・・・お前の部屋?」


「そーだよ~。」


答えつつ、私はウィッグを取る。


翼が、じぃっと私を見つめた。





「・・・・・何?私の顔になんかついてる?」



「いや・・・・。本当に女なんだなぁと思ってな。」



「なっ!!!!!」




失礼なっ!!!





「そぉりゃぁねぇ。私は男勝りですし?男装してる方がイケてますけど?」

皮肉たっぷりに言ってやった。



翼は、ムカつくことに、ゲラゲラ笑い出した。


「ハハハハハ!!!お前、男勝りなわけ?知らなかった!」



「で、何で笑う!?」



「言い方がオバちゃんっぽかったから。ハハハハハハ!!!!」




なるほどね・・・・・・

っつーか、いい加減笑い止めろよ!!



「ハハハ・・・・・青菜って、面白いなぁ。」


「いや、面白くは無いと思う。翼って、皮肉通じないんだね。」


「え?さっきの皮肉だったんだ?」


「そーですよ・・・」


笑われたけどね!!!




「全然気付かなかった・・・。青菜の皮肉って、甘いな。」


「甘くないと思うけど・・・・・。」


「いや、甘いよ。甘甘だ。」



キッパリ言うね、翼・・・・・。



「・・・・・それよりさ。翼の瞳の翳りが気になるんだけど?」



本題いこうか、翼。

話、逸らすなよ。






「なぁ・・・どうして気になるんだ?」

ポツリと翼が問う。



「だって、クラスメートになるんだし。大事そうなことだから、知っときたいよ。」




私は、翼と仲良くなりたいんだよ?



――狩人として、裏切るかもしれないけれど。






「青菜、お前には関係ねぇことなんだよ。知らなくても、問題ない。」


「でもっ!!!!」



「関係、ねぇんだよ。全然。」


低い、ドスの利いた声。



さっきまでゲラゲラ笑っていた翼とは思えないほど・・・


冷たい瞳。


・・・・・拒絶・・・・・






―――・・・でもね。


生憎、私はそんなんでヘコたれるほど、ヤワじゃいんでね。

けっこう、図太いし、しつこいよ?





「関係ないかどうかは、私が決める。ご心配なく。」



私は、不敵に、にっこりと微笑んだ。



翼は、目を見開いた。




「・・・・・へぇ、けっこうやるじゃん。」



「サンキュ☆」




さて、翼、聞かせてもらうよ?





私は、翼の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「ねぇ翼。あんたは何を抱えてるの?」


「関係ねぇ、じゃ、済まされねぇんだよな?」


「もちろん!」




ハァ・・・翼がため息をつく。


そして、ためらいがちに、私の瞳を見つめ返した。


ゆっくりと、口を開く。




「・・・・・青菜。"紅狼"っていう名前の由来、知ってるか?」


「え?紅狼の名前の由来?どうして"紅狼"って名前の族にしたかってこと?」


「そうだ。知ってるか?」


「知らない。興味無い。」


「興味無い・・・か。」


翼が苦笑する。



「俺はさ、"紅狼"っていう名前の由来が気に入って、紅狼に入ったんだ。」




名前の由来?



翼は、自嘲気に笑った。



私は、じっと耳を澄ました。

どんな小さな呟きでも、聞き漏らさないように。