「……なんか……迷惑かけてごめんね?」
「別に」
しばらく歩くと、狼谷君はあたしの手をパッと離した。
手袋をしているほうの手を握りしめて歩いた狼谷君。
手袋越しにでも、彼の温かい体温が感じられて心臓がトクンと小さな音を立てる。
「あのおじさん……今頃、どうしてるかな……」
「おじさんって誰だよ」
「さっきの酔っぱらったおじさん……。あの男の子……えっと、ナオ君に言ってたでしょ?あとよろしくって」
あとよろしくっていうことはそういうことだよね……?
今頃、殴られて路地裏のゴミ袋の上に放り投げられているかも。
ナオ君の他にも狼谷君の仲間もいたし……。
すると、狼谷君がフッとわずかな笑みを浮かべた。