5時間目の物理が終わり、深月はトイレに向かった。
 
トイレで用を足して、手を洗って出ようとした。その時、トイレのドアを出たところの廊下で、何やら女子生徒と先生が言い争う姿が見えた。
深月は出るに出られず、向こうから姿を見られないよう少しかがんだ。すると、話の内容がかすかに聞こえてきた。
 
 
「…全く…君は…………居眠りが…………だから………が………下がるんだ」
 
 
「…でも……………」
 
 
「…とにかく……………課題を………きちんと…………期日に…………………わかったね?……」
 
 
察するに、その女子生徒の授業態度が悪いので、もうすぐ始まる夏休みの課題を期日までに出せ、ということだろう。
だがそれは厳しい。何しろ、ウチの学校は宿題の多さで有名なのだ。
期日までに終わらせられる奴なんて、相当な勉強オタクしかいない。
深月はその女子生徒をかわいそうに思いながら話を聞いていた。
 
話が終わったようで、先生の方はどこかへ行った。
深月がトイレから出ると、その女子生徒は今にも泣き出しそうな顔で走り去って行った。
 
深月は、走り去る姿を数秒見つめていた。
すると女子生徒は7組の教室に入って行ったので、そこで初めて深月は彼女と同じクラスであることを知った。
 
 
その直後、6時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
席についた深月の耳に、いつもの学校生活では聞くことのない言葉が届いた。
 
「…さ、今からゲームをするぞ」
 
みんな、そんなゲームダルいと思っていた。もちろん深月も同様だ。
 
だが数分後、その考えは完全に逆転した。