「はぁ?お前何言って…」
言葉はそこで途切れた。
 
 
 
「……あっ!そういうことだったのか…!」
二人の内の一人が、突然立ち上がった。
「答え」を見つけたのだ。
 
そして、深月のこれまでの提案が全て、仕組まれた罠だと気づいたのだ。
 
二人の内のもう一人は、座ったままの状態で尋ねた。
 
 
「なぁ…一体どういうことなんだ?」
 
「…こういうことさ。
まず、今二つの盤面は全く同じだ。
深月は、左側で動かされたお前の手と同じように右側の俺の盤の駒を動かしていた。
また逆に、右側で動かした俺の手と同じように左側の駒を動かした。
こうすれば、いつどんな時でも盤面は同じになる」
 
 
「そして、チェスというゲームは先手か後手が勝つ。同じ盤面なら、先手が勝つか後手が勝つかも同じ。
つまり必ず、どちらも先手が勝つか、どちらも後手が勝つかだ。
ということは。
一方で先手、一方で後手を動かす深月は、どちらか一方で必ず勝つんだ…」
 
 
二人は呆然としていた。それを見下すように、深月は顔をゆっくり上げた。
 
 
「……わかった?僕はもう、チェックメイトしているんだよ」
 
深月はそう言って、自分のクイーンを相手のキングの前に力強く置いた。