「…まず、近くの人と班を作ってくれ。全部で9班。だから4、5人ぐらいで班を作ってくれ」
 
深月は隣の人に、一緒に班を作ろうと言おうとした。
だが、深月がそう言う前に、隣と後ろの女子と、斜め後ろに座っていた昇と深月とで、4人の班がもう出来ていた。
 
みんな、不気味なほど目が輝いている。それほどではないにしても、深月だって目が輝いている。
だが、やはり心は落ち着いていた。
 
「…よし、班は出来たな。それじゃあ、今からこの箱を班にひとつずつ配る。中は見ないように」
先生はてきぱきと箱を各班に置いていった。誰かが触れようとしただけで「中は見るな」と叫んだ。
箱を配り終えると、先生は小走りで教卓に戻った。
 
「…その箱には、紙、鉛筆、ハサミ、コンパス、定規、ゲーム用の紙幣が入っている。それらが君らの『持ち物』だ」
 
みんな、訳のわからないような顔をした。
 
「要は、ハサミで紙を切って、いろいろな形を作るんだ。長方形とか円とか。
それらを、世界銀行に売るんだ。世界銀行の役は先生がやる。切り取った図形を世界銀行に売って、金を稼ぐわけだ」
 
「それらは寸法が決まっていて、1ミリでも大きさが違うとダメだ。また、図形によってそれぞれ値段が違うから、どの形を作るかよく考えるんだ」
 
 
みんな、大体は理解したようだ。大事なのは、ひとつの図形を、いかに正確に作れるか。
だが、深月に限らずみんなが、同じある疑問を抱いていた。
 
 
「先生。このゲームと人権と、どう関係があるんですか?」
 
一人の女子が手をあげてそう言った。みんな、よくぞ言ってくれたという顔をした。
 
「あっ、そうか。言ってなかったな…」
 
 
だが、この後に語られるあるルールによって、ゲームの雰囲気は大きく変わるのだった。