「予告していた通り、今日は人権に関するゲームをする…」
 
その時まだ、みんなのテンションは最低だった。
 
「…人間は、それぞれ持っているものが違う。ある人はサッカーが上手いし、ある人はチェスが強い。人それぞれ『違う』んだ。それは悪いことではなく、責められるべきものではない。
だから、自分が持っているものを相手が持っていないからと言って、それをバカにしたりしてはいけない。そういうのの発展したものが『いじめ』や『差別』なわけだ。
今日は簡単なゲームで、そういったものの大切さを学んで欲しい」
 
まだ、みんなのテンションは低い。予習をしている者も何人かいる。
「けど、ただこんなことをしても、みんなやる気が出ないと思う。だから景品を用意した」
 
 
「…このゲームで素晴らしい成績を収めたチームにはなんと!夏休みの課題のひとつ、『よくでる2000』を免除してやる!」
 
 
「なんだって!?よくでる2000免除!?」
静かな水面に巨大な岩を投げ込んだかのように、みんなが一斉に騒ぎ出した。
「よくでる2000」とは、数学や物理など全ての教科の頻出問題2000問を集めた、地獄のような問題集だ。
これを期日までに出す生徒は、学年に3人いるかいないかだそうだ。
ちなみに余談だが、問題集の名前は「太鼓の達人」に収録されている曲の名前らしい。

 
とにかく、そんな賞品があると知ればみんなやる気が出ない訳がない。たちまち教室は熱気の渦に包まれた。
 
 
「よし!じゃルールを説明するぞ…」
 
みんな体を若干前に傾けた。もちろん深月も。