「そう言えば、シンジさんは何の武術を?」

幸大が言う

「俺は武術を正式にやったことはない。

若い頃に道場破りを何度かやって立はの名前をもらっただけで教えを受けたことはないんだ。」


「へぇ…。」


「ただいま戻りました‼」

あずさが戻ってくる



「…。

幸大君、私と闘ってみないかい?」

「え!?」


「もちろん、手加減はする。」


「じゃあ、是非!」

幸大が言う

「師匠が自分から言い出すなんて…」


あずさが言う




空き地

「あずさ、よく見ておきなさい。

いい勉強になる。」

「はい‼」




「さぁ、かかって来なさい。」


シンジが言う


「王槍!」

ドシュンッ!

シンジの腹に当たるがびくともしない

「ふんっ!」

シンジが拳を振り下ろす

「燕遊!」

キュイッッッッ…

燕の鳴き声と共に燕の幻影が舞い、シンジの後ろへと回り込む

「虎喰!」

グルルルルル…

虎の鋭い眼光がシンジの分厚い筋肉の鎧を見つめる


「王針!」


幸大は人差し指でシンジの腹部を突こうとする


「はっ‼」

ガッ!

「痛っ!」

幸大が危うく突き指をするところだった

「力を入れて筋肉の隙間を移動させるなんて…思ったよりも器用な人ですね…」

「はぁっ!」

シンジが殴りかかる

「龍流し!」


バチィッッ!


(な!?

龍流しじゃ流せない威力!?)


バゴォンッ!

幸大が吹き飛ばされる


砂埃が舞う

「天龍槍!」

ゴォッ!

「ふんっ!」

バシュゥッ!

シンジが風の槍を片手で振り払う


「まだまだ!」

ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ!


幸大は空き地の仕切りに使われていたコーンバーを取り体の前で振り回す

「はぁっ!」

幸大が攻撃を仕掛ける


「技の拳聖も師匠だったな…だが、まだまだ未熟!」


バキィッ!

シンジがコーンバーを破壊する

「燕遊!」

ヒュッ…!


「王貫!」

幸大はシンジの横へと移動し脇腹へ抜き手を放つ

「ぐぬっ!?」

シンジにダメージが通る


「最初に王針で攻撃の範囲を俺に覚えさせると同時に俺の筋肉の移動範囲を確認したのか…」


「ああ。

そうして、攻撃が指4本分に広がった攻撃で筋肉の隙間を狙った。」


幸大が言う


「?

なぜ、構えをとく?」

シンジが言う

「これ以上、シンジさんに有効な攻撃方法は思いつかないのに…今の攻撃でダメじゃ…降参するしかない。



その筋肉の一枚目は隙間を狙ったけど…その下にまだ筋肉があった…」

幸大が言う


「…。

痛がったのは演技だ…

が、俺の筋肉が何層にも分かれているのが解ったのはお前だけだ。」

シンジも戦闘態勢をやめる


「さすが拳聖…」



「いや、昔から筋肉質で筋肉がつきやすい体質だっただけだ。

パンチも蹴りも力任せだ。

お前ほどの筋肉であれだけの威力を出せる方がスゴいことだ。


それに、あの勢いで俺の筋肉を指で撃つなんて…普通は指が折れる。

筋肉以外の力をうまく使えてる証拠だ。」


「いえ、そんな…」


「喧嘩なら俺が強いが…武人としては幸大、お前の方が俺よりも遥かに高みにいる。」