「…あの人には聞かせられない話でも?」

幸大が言う


「華仙から何か聞いてるかも知れないが…私はとある中国人の兄弟を殺したんだ。

その生き残った中国人が私と…華仙を狙って日本に1年前に来ているらしい。

君も襲われたと書いてある。」


「まぁ…」

「心の拳聖こと劉華仙は二十数年前までチャイニーズマフィアのドンだった。

そして、俺はチャイニーズマフィアの下っぱに拉致された日本の少年だった。



そして、拉致したのは現在、日本に来ている中国人の女だ。

彼女は陸春華。




華仙はマフィアとは言え日本で言う任侠を重んじるマフィアだった。

むやみに殺さず、クスリはやらず、年上を敬い、年下を思う…ってのが理念だったかな。


まぁ、喧嘩をしたり、賭場を開いたり…あとは武術の試合を闇で開いて金儲けしたり…


まぁ、法律的には問題があったが…地元じゃ人気だったみたいだ。


そして、陸春華の両親、兄弟もマフィアの一員だったが…賭博で多額の借金をした。

それで、俺を日本から拉致して身代金を要求した。

日本人が金持ちだと思われていた時代で、バブルが終わる直前で景気も良かったからな。




だが、華仙は激怒した。

拉致や誘拐はクスリと同じく御法度だったそうだ。

彼らもそれを承知で行っていた。

そして、華仙の敵対組織に俺を売って自分たちも組織を鞍替えした。


後に…華仙と敵対組織は抗争になった。


華仙は当時は拳聖とは呼ばれてなかったし、今ほどの実力もなかったがそれでも圧勝だった。


そして、マフィアもヤクザも身内は大切にするが裏切りは許さない。


華仙は陸春華の両親を殺した。


俺は人質として陸春華の兄弟に連れ出されるところで移動のために体が自由になった時に必死に暴れた。


一人は割れた酒の瓶で滅多刺し、一人は落ちてた銃で何発も撃った。



が、まだ幼かった陸春華はマフィアの構成員ではなかった。

華仙は敵対組織を傘下にしてその組織に陸春華をマフィアの道に出来るだけ進ませないように育てるように指示した。



華仙は俺を日本に帰す時に一緒に日本に来た。


それが俺と華仙と陸春華の関係だ。」



シンジが言う




「じゃあ…誰もそんなに悪くないだろ…」

幸大が言う


「善悪は人によって変わる。

俺は生きるために陸春華の兄弟を殺したが、相手からみれば殺すことはなかったと思うだろうし…

華仙も罪悪感が多少はあったから陸春華を見捨てずに最低限生きていけるように指示した。


陸春華からしたら俺達は家族を殺したのにのうのうと生きてる殺人者だ。」