「まぁ、気にするな。

多少痛い目にあってもすみれも武神流の者、いい鍛練になったはずだ。」



「…。

ちょっと違うけど、まぁ、なずなよりは妹さんに謝った方が良いよな。



それよりもさ…もう一つ謝らないといけないことがあるんだけどさ…


昔…」



「話はそこまでだ。


夕陽が沈んだ。

宣告の時だ。」


広場の端に設置された複数の篝火が広場を照らす



「…。

私は…どうしたら…」


明るかった表情が暗くなる



「さぁ…なずな、武神流の正当継承者を選ぶのだ。」


「…。」

なずなが幸大を見る

「?」

幸大は首をかしげる


「母上…」

なずなが見る


「私からの言葉はさっき言ったはずよ?

宣告の時になった今、私に言えることはないわ。」


「…はい。」

なずなは苦しそうに目を閉じた


「私はしっかりと武神流の先代の巫女としても母親としても助言したつもりよ?」


母親がそっと語る



「…母親としても?」



―宣告の時…広場に居る者からあなたの将来の夫を選ばなければならないのだから―



「あ……!?」

なずなが母親を見た


「しきたりを守るというのが周りの意見だもの、しきたりに従った者に非難などできないわ。」


母親が小さく呟いた