「お前はどうなんだよ?」


聡が真面目な表情で聞いてきた。




「何がだよ?」

「お前は、綾咲のことどう思ってんのかって聞いてんの!」



考えたこともなかった。



綾咲礼。

何で俺はここまで心配してるのかも、毎日家まで送ってんのかもわからない。


俺は……




好きなのかな?


「わかんねぇよ。そんなこと。俺、綾咲のとこ行ってくるわ。」



とりあえず俺は話しを中断して、駆け足で教室に戻った。



まだお昼休みだったせいか、廊下にはたくさんの生徒が立ち話をしていた。




「弘君?」


後ろからかけられた声に気付き、俺は足を止めた。




「どうしたの?そんなにいそいで。」

「いやっ。アレだよ。アレ。」



それほど聞きにくいことでもないのに、俺はなかなか切り出せなかった。


「あのさ…聞いた?その……何か噂とか。」     



俺の質問に、彼女は答えようとしなかった。


それからしばらく沈黙が続き、予鈴が鳴った。




「ほら、その話はまた帰りにしよ?予鈴鳴っちゃったし。先に教室戻るね。」


小走りで教室に向かった彼女の後ろ姿は、昨日見た寂し気な姿と重なった。