俺がようやく日誌を書き終えて戸締まりをする頃には、もう空は薄暗くなっていた。





「何かしゃべりすぎちゃったね。ねぇ、今日何か用事ある?」

「いや。何で?」



俺は2、3歩前を歩く彼女の背中を見ながら聞いた。


彼女はくるっと回って俺の方を見た。





「送ってくれない?家まで。」



はっ?



いや……別にいいけど図々しいな……なんて彼女には言えない。


とりあえず「何で?」と聞いてみた。



「あたし……最近誰かに見られてるような気がするの。あっ、でもあたしの勘違いかも。やっぱりいいよ。そんなに遠くないし、1人で帰るね。ごめんね。」


そう言って、彼女はまたくるっと回って歩き出した。



「ちょっ、おいっ!」



俺が慌て声をかけると、彼女は振り向きながら、えっ?っと小声で呟いた。 


「あれ、本当なのかよ。さっきの見られてるって。」


俺の質問を聞いて、彼女はまた前を向いた。




その小さく細い背中は少し寂しく見えた。


「多分……勘違いだと思う。あたしって、自意識過剰なのかな?それとも被害妄想??だからいいよ。じゃ、あたしこっちだから。バイバイ。」