痛い。



ってか自分の顔を見ていて痛々しい。







「うわっ!どーしたの?そのアザ。」



突然後ろから姉が驚いた顔をして話しかけてきた。







「おはよう。昨日ちょっとトラブった。ってか何でこんな早くに起きてんの?」

「おはよ。今日仕事なの。会議あるから早く行かないと。」





歯ブラシを手に取る俺に続いて、姉も歯ブラシを取った。





しばらく沈黙が続いて、俺は何も考えずに歯をしゃこしゃこと磨いていた。





「あのさぁ、何があったのか知らないけど。やられっぱなしなんてカッコ悪いんじゃない?あんた男でしょ?シャキッとしなさいよっ!シャキッと!」







不器用な姉が俺を励ますのは久しぶりで、なんだか嬉しくなった。






“ありがとう”








たった一言なのに、照れくさくて伝えることができなかった。






姉の言葉を胸に、俺は昨日とは違う気持ちで家を出た。















いつもより早く家を出たから、学校にはまだあまり生徒が登校していなかった。





靴を履き替えている途中、誰かに声をかけられた。






「黒川。」





声の主は、今一番会いたくなかった高島だった。






「なんだよ。」

「俺さぁ……」