「綾咲さんも大変だ。こんなしつこいバカに付き纏われて。」






半笑いで聡が彼女の背中を見つめながら言った。








俺はただ、彼女の背中を追いかけた。












「綾咲っ!待てって!」



ようやく彼女に追い付いたのは、校門の前だった。






俺は走る綾咲の腕を掴んで引き止めた。





「離してっ!」



引き止める俺の手を、彼女は勢い良く振り払った。







「何で逃げるんだよ?俺何かした?しつこく聞いたのはお前の様子がおかしいからで……」

「……なの。」




彼女が小声で何か言った。





「迷惑なのっ!これじゃ、あたし達付き合ってるみたいじゃないっ!勘違いされて迷惑なの。もう送ってくれなくていいから。バイバイ。」






それだけ言って、彼女は俺に背中を向けた。





何なんだよ……



迷惑って何だよ……







俺は彼女を離れて行く追い掛けず、その場にしゃがみ込んでいた。






雨だけが虚しく降り続いていた。