「おうっスッ!」





突然のことで、驚いで上手く言葉が出なかった。








「何それ?」




と言いながらいつもより大げさに彼女は笑っていた。










「今日雨だね。学校に着くまでにもうびしょびしょだよ。」




少し走って来たのか、息が乱れていた。



「走って来たの?」

「えっ、あっ、うん。遅刻すると思ったら、そうでもなかったよ。」





彼女はそう言いながら、落ち着きなくキョロキョロと周りを見渡した。






「どうした?なんか落ち着きないみたいだけど。何かあった?」

「…………」





返答がなかった。






彼女はキョロキョロ見回すのを止め、しばらくしてから俺の腕を掴んで走り出した。






地面に足がつく度に、バシャバシャと音をたてながら冷たい雨がズボンに染みてくる。






「綾咲っ!おいっ!」





あまりに必死に走るので、何が起こったのかわからず俺は彼女の名を呼んだ。




三回目ぐらいで、やっと返事が返ってきた。




「えっ?あっ、ごめん。」





返事とともに足が止まった。