電話してるみたい。相手はきっと彼女。




普段は無口な彼が『好き』って口にしてるだけで辛いよ。どうして私じゃないんだろう。


彼女にはガラス越しのキスなんてしないよね。




こんなに、こんなに好きなのに。


彼は違う人が好き。忘れなきゃ、諦めなくちゃいけないのに、それすらできない。




その場に蹲って声を殺しながら泣く。
奈々が私の背中をそっと撫でてくれる。




「陽菜、今なら佐藤くんと話できると思うよ。キスのこと聞いておいで。好きなんだから無理して諦めようとしなくてもいいよ」