優妃は滑り出した車の助手席で冷めた目で隣のホストの顔をのぞいた。ヤケに日に焼けてはいるが端正な顔立ちが気にいっていた。 しかし、この男の利用価値はそんな事とはかけはなれていた。和樹は車の趣味がよく、運転技術に優れている。ただそれだけだった。
「今日は?夜までお姫様の時間を俺に貸してくれますか?」

和樹は相変わらず頭の悪そうな甘ったるい喋り方をしていた。彼にとって私が特別であることは疑う余地すらない。

「そんな喋り方はやめなさいといったはずよ。私は馬鹿なゴッコ遊びに付き合いたくなどありません。」

何度いっても自分の事を姫などて呼ぶ癖が気に入らない。
「貴女の不機嫌な顔はセクシーなんですよ。これはわざと。でもこれ以上の無礼を働いては僕がお払い箱になるでしょうからね。気を付けます」

和樹は端正な顔を少し歪めて吐き出す様にいった。

「わかっているのなら結構よ。せいぜい気を付けることね」

優妃の口元が少しだけほころんだ。

車は夕闇を走りつづけた。