おっちゃんは俺が店に来たら皿洗いをしょっちゅう俺に押し付ける。


最初は嫌だったけど、まかないでラーメンを食わせてくれたり、少しだけどちゃんとした小遣いくれたりして、
長い休みの時はアルバイトみたいな感じで来たりしてる。



どんぶりを洗っていると、シイのことがふと脳裏を横切った。



最近悪口やいじめまがいみたいなことをされてるシイ。


それを彼氏である佐伯に、「迷惑かけたくないから」と一切言わずに今日まで我慢していた。



けどそれが今日爆発したらしく、佐伯に当たってしまったと、シイが言っていた。



「シイは最低じゃねぇよ…」



彼氏のことを思って全部我慢して、耐えて…


普通の女じゃ絶対できねぇ。



シイのほうが俺よりずっと強くて優しいやつだよ…



でも、そのシイが想っているのは、
愛しているのは、俺じゃない。


シイと佐伯の間に入り込める隙間なんて無いことは知ってる。

シイの心を俺が動かすことを出来ないのも知ってる。


けど、シイの幸せを願うことは許してくれよ。



そう思いながら、俺は静かに一人で嘲笑した。