「謝りに行ってこいよー。シイ」
私にそう言う渡川。
なんか力強い言い方で、今日の渡川はいつもと違う気がした。
私は身支度を整え、おじさんにラーメンのお礼をいって、店の外に出た。
渡川にもお礼を言って駅に向かおうとしたとき、渡川が私に何か投げた。
手から伝わるひんやりとした感覚。
手のなかにあったのは手のひらサイズの保冷剤だった。
「電車の中でも、目に当てとけよ〜
今みたいな土偶みたいな目で佐伯と会うなよ」
ケケ、と笑う渡川。
「渡川、なんか今日優しいね」
「いっつも優しいけどな。
ほら、遅くなる前に早く行けよ」
「うん。
今日はほんとありがとうね。」
私は渡川に軽く手を振って、保冷剤を握りしめて駅に向かって走り出した。