《胡桃side》
「もう一つ話さなきゃいけねぇことがある。」
覚悟を決めたように、潤は真っ直ぐ私を見た。
今、潤から過去の話を聞いたばかりだというのに……まだ何かあったの?
「胡桃は……“あの日” の事件を知っているか?」
ドクンーーー……
“あの日” というのは、あの事件のことだろうか。
名前すら付けられなかった、あの事件。
ただ、私を含めた関係者は、“あの日” と呼んでいる。
「街郊外で起こった、闇組織どうしの大規模な衝突事件……」
ドクン……ドクン……
なぜ相馬が、そのことを知っているのだろうか?
この事件は、裏の世界でも、知る人はほんの一握りに限られている。