ーーガッシャンっ
私は一度、移動教室の最中に、廊下の壁にかかってる置物を落として割ってしまったことがある。
その時クラスメートはおろか、友人たちでさえ見て見ぬふりをして、私を置いていってしまった。
…ただ、1人を除いて。
ーー大丈夫ですか?
あの時も、私の世界は色づいたの。
誰だって、自分が責任を被る可能性は、少しでも避けたい。その一心だけで、みんな私を置いていったのに。
何も関わりもない、喋ったこともない私のために手を差し伸べた彼に、私は驚いて。
この薄っぺらい世界で、初めて温もりを感じた気がした。
ーー…あの、ありがとう。
ーー…?それより、猫田さんは怪我なかったですか?
彼は助けることは、まるで当たり前だというように、微笑んでいた。
初めて感じた温もりに、私は柄にもなく泣きそうになった。