少し涼しい風が体をすり抜ける。
「んっ…」
パッと目を開けると
私はベッドの上で寝ていた。
尋常じゃないくらいの汗。
それを拭う男の子。
「お、目覚めたか?気分はどう?」
「大丈夫…ー」
まだ、はいって一ヶ月。
まともに顔も覚えていなかった。
「俺、石井夏生。一年三組」
「あ、私は斎藤七瀬。一年二組」
「隣のクラスなのに会うの初めてだな」
「そう…だね」
石井夏生…ー。
聞いたことはあった。
だだ、顔を見たのも話すのも今日が初めて。
「もしかして、石井君が連れてきてくれたの?」
「夏生でいいよ。そう、だってさ、俺の目の前で七瀬倒れたんだぜ?ビックリしたよ」
七瀬、そうよばれたのに違和感は感じなかった。
「ごめんね、重かったてしょ?!」
「んー、ちょっとだけ重たかったかな」
「やっぱり…」
痩せとけば良かったな。
陸上部をやめて、少し太ったんだっけ。
「あ、嘘嘘!俺からすれば軽すぎだった」
「ごめんね…ー」
私を気遣ってくれて、
そう言ってくれた優しさが身に染みた。
「ねぇ、保健の先生は?」
当たりを見回しても、私と夏生以外は見当たらない。
「何か大怪我した人が出て来たらしくて、だから俺が、代わりに看病って奴」
「ずっと一緒に居てくれたの?」
「おう!」
初対面でこんな人初めてだ。
「ごめんね、競技とかあったはずなのに…」
「さっきから、謝りすぎ。俺は、ありがとうが言って欲しいんだけど」
ポンポンと頭を叩かれた所が、熱くなった。
「夏生、ありがとう」
「おう♪」
ニコッと笑った、その笑顔にドキッとした。
ガラガラ…ー。
と、ドアが開く。
「斎藤さん、体調はどう?」
「あ、じゃあ俺行くわ」
「うん、ありがとう!」
ドアの向こうに消える夏生の姿を
私は少し見つめたままでいた。
「彼、優しいわね。斎藤さんを必死におんぶして、ここまで連れてきてくれたのよ」
「そうなんですか…」
そんな必死に、私を心配してくれたなんて…ー。
ありがとう何かじゃ、伝わらないくらいの
感謝をしないと。
「脱水症状よ、ちゃんと水分取るようにね」
「はい、ありがとうございました」
夏生のおかげで、閉会式には出られた。
それから、何度か夏生の姿を探してみたけど
なかなか見つからなかった…ー。