「尚宏さんっ、ネクタイ縛りましょうか?」

「あぁ、悪いな」

私は、波崎沙希、東山尚宏さんの妻です。

「あっ、ありがとう」

「いってらっしゃい!気つけてね」

そういって、毎日尚宏さんを送りだす。

「じゃあ、言ってきます」

尚宏さんに手を振り、

家事をする。

いつもの同じ日々なのに、かけがえのない宝物と思えるのは、

貴方がいてくれたからなのかな。

尚宏さんとの出会いは春だった。

あの頃の記憶がよみがえってくる。