「それじゃ……僕が時々おかしくなってたのは、僕の中にいる奥乃姫のせいなんですか」


『ああ、そうだ』


「急に、その、血、が欲しくなったりしたのも……」


『奥乃の影響であろう。兄弟に習わなかったか、魔は血を欲するものだと』


「……僕が和田を…友達を傷つけるところだったのも、奥乃姫のせい……なんですか」


『ああ』


「そんな………………そのこと、僕が生まれた時からわかってたんですか」


『ああ、分かっていた』


廉姫はここでいったん言葉を切って、素っ気なく華女の方を伺うような仕草をした。


しかし華女はなんの身振りも返さない。




『……お前が生まれた時、私には三つの選択肢があった。

一つは育つに任せ、まずは様子を見ること。

二つ目は地下牢に匿い、他の者に手出しができぬようにすること。

そしてもう一つは、ひと思いに殺してしまうこと』


礼太は頭を鈍器に殴られたような衝撃を感じた。


『しかし、後の二つは華女に断固として却下された』