「……お久しぶりです」


そう言うのはなんだか可笑しい気もしたが、それ以外の言葉も思いつかない。


廉姫は毒気を抜かれたような顔をすると、ふっと笑った。


『ああ、そうだな』


ふわふわと宙に浮かぶ廉姫は相変わらず、十二単の簡易版のような衣服に身を包み、子供のようななりをしていた。


少し偉そうな態度も健在だ。


廉姫がふわふわと上座へ漂い、華女を手招きした。


しかし、華女は首を横に振り、礼太より一段高いところに登ろうとはしなかった。


廉姫は首を傾げながらも再び礼太たちのところに戻り、定位置である華女の肩口ではなく、礼太に向き合う形で畳の上にちょこんと座った。


一連の動きを目で追っていた礼太は、突然改まった姿勢をとる廉姫に戸惑った。


『礼太、お前、以前から時々我を失うことがなかったか』


核心を突く発言に、寸の間、息がつまる。


答えない礼太に対して、廉姫はそれを責めようとはしなかった。


かわりに、こう言った。


『今から、私がその理由を話してやる』


廉姫の小さな顔を凝視する礼太の横で、華女が静かに腰を下ろした。


礼太には、浅くなる呼吸を苦しく感じる余裕もなく、華女の動きに気づくことはなかった。