ちちっ…
鳥の鳴き声。澄んだ空。
大きな1枚ガラスで作られた大きな窓からは輝く太陽の光が注がれる。



あぁ、今日からはじまるんだ。
新しい日々。半ば無理やり入れられた高校だが、やはり新しくはじまることにはウキウキする。


西園寺あおい 
それが彼女の名前だ。

背はそれほど小さくもなく、大きくもなく。
肩まで垂れた黒髪はつやつやとしている。
あおいは自分の名前を好まない。"西園寺あおい"と名乗ることほど、辛いことはない。

自分には大きすぎるベッドをおりて、自分専用のキッチンへ向かうとすでにメイドたちが朝食の用意をしているのか、ベーコンの香ばしい香りが漂ってくる。


「あおい様、おはようございます。」

そう挨拶してくるのは、メイドをしきっている最年長のほし。

「ほしさん、おはよう。」

にこりと微笑むあおい。
その笑顔には、どこか寂しさや哀しみが隠れているようだが、ほしはそのことに気づいていないのかあおいを席へと促す。