そんな時、誰かが言った。

自分たちで出来ないのなら、誰か出来るものにやらせればいい。…と。

それが、ニックたちが人を襲うようになったきっかけの言葉だった。


最初は躊躇わなかった訳ではない。

ロイの顔が一瞬過ぎった。

だが、ロイを思い出すと憎しみしか出てこない。

世の中不公平だ。

なぜカレンが死ななければならなかったのか。

なぜカレンが病気にかからなければならなかったのか。

何の努力もせずに裕福に暮らしている者がいる。

少し金を持っているだけで、偉そうに振る舞う者がいる。

少しくらい裕福な者から食べ物を分けてもらってもいいのではないか。

世の中不公平だ。

それならば、自分たちが少しでも公平にしてやればいい。

兄さんはカレンを死なせた。

が、僕たちはこの子供たちを生かそうとしているんだ。


子供たちの世話役として、まずは若い女性に目をつけた。

女なら子供を相手するのに適している。

そして、食糧や物資などは森を行き来する乗合馬車の荷物を狙う。

乗合馬車などを利用できるのは少なからず金を持っている証拠だ。

そこに女がいれば文句はなかった。

それで幾度か馬車便を狙い襲った。

そうして約二年が過ぎ、現在に至ることになった。