なんてことだろう。
きっとその大人たちはこの村を捨てたに違いない。

ニックは腹立たしさを感じた。

この少年は子供たちの中では比較的年上のようだが、中には3歳くらいの幼児もいるではないか。

かわいらい姉妹の姿もある。

しかし、自分たちに何が出来るだろう。

手持ちの食糧を分け与えて、そのまま去ってしまってもいいのだろうか。

風呂にも入れていない分、衛生的にも悪い。
どんな病気になるかも分からない。

とてもしゃないが、知ってしまった以上、ニックには放っておくことが出来ずに、その子供たちを盗賊団のアジトへ連れて行くことにした。


アジトへ着いた子供たちはとても満足そうだった。

質素ではあるが、温かい布団で寝られ、雨風も凌げる場所て過ごせる。

なにより、空腹に悩まされないことが一番だったのだろう。

だが、ニック側にも問題はあった。

子供とはいえ一度に人数が増えたことにより、食糧の調達が極めて困難になったのである。

幼児の面倒をみるのも気苦労だ。

アジトにいるのはもちろん男の盗賊ばかり、誰も子供を育てたことなど経験がない。

唯一ニックはカレンの面倒を小さい頃からみていたが、盗賊団の頭が子育てに気を取られている訳にはいかないのだ。