「カレンは、僕を止めようとしたんだ。
僕が間違っていると…」

そうしてニックのすすり泣く声だけが、部屋の中に聞こえていた。

ジルとローグは何も言えなかった。
どう声をかけていいのか分からなかった。

それはジャンも同じで、彼も黙ったままニックを見守っていた。


ニックが見たものは、果たして彼の本能が作り出した幻なのか、それとも本当にカレンの想いが思念として現れたものなのか、それはどちらとも言えない。


しばらく経った後、またしてもロイが口を開いた。

「馬鹿野郎が…。だからって俺に殺せって…。
言っておくが、俺はお前を殺す気なんかねぇよ。頼まれたってお断りだ」

「あぁ、兄さん。本当にすまない」

「…あぁ。それで、お前が病気なのは分かった。
それで、何で人を襲ったりなんかしたんだ」

ロイは言葉に詰まりながらも気丈を振舞ってみせた。

ロイが話の続きを促すと、ニックは一度大きく息を吸い、続きを口にし始めた。