その日の放課後。サキは、裏庭にいた。俺とアキは校舎の影に隠れて様子を見ていた。(盗み聞きとも言う。)

「あれ?なにしてんの?」

声をかけてきたのは、俺の親友…シュンだった。

「「シーーッ!!」」

「お、おう…。」

ちょうど、サッカー部の先輩が来たところだった。

「あれ…光輝さん!?」

サッカー部の先輩っていうのは、俺らの知り合いの光輝さんだった。
まぁ、サキは光輝さんなんて知らないだろう…。

「香住咲ちゃんだね?」

「はい。」

「俺、東野光輝。よろしく!!」

「よろしく…。」

なんだか、モヤモヤした。見てられなくなった。アキが、俺の制服を握った。

「いきなりだけど…俺の彼女になってくれる?」

光輝さんは、うつむいていた。らしく…なかった。アキは、小声で呟いた。

「サキ…。」

シュンのごくり…という音が聞こえた。

「いいですよ♪」

サキは、答えた…。

「えっ…マジで?」

「嘘ついてどうするんですかぁ??」

正直、驚いた。サキは、また振るとばかり思ってたから。アイツは、いつもいつも断ってた。だから…今回も…。でも、違った。

「サキー!!」

アキが飛び出してサキに抱きついた。2人共、いい笑顔をしてた。

「なぁ、ユウ。光輝さんって…女遊びすげーって聞いたけど?」

シュンが、俺の肩に手を置いて言った。

「あぁ…。遠恋の彼女、いるらしいぜ。どこだっけ?東京かな?」

「そーいえば、引っ越して来たんだっけ?東京から?」

「そーそー。」

「サキちゃん、大丈夫かな?」

「どーだろーねー…。」

そのとき、俺が止めていれば…。あのとき、いんじゃね?って言わなかったら…。
あんなことは、なかったんだろうか?