放課後、私は陸上部の練習をこっそりのぞいていた。
私がここにいることがバレたらまた色々めんどくさいし。

高校の時はグラウンドで練習だったけど、ここの大学は陸上競技専用のフィールド。
そして一生懸命練習してる先輩たち。
やっぱり、また走りたいなあ、って思っちゃう。


その先輩の中に紛れて走っている、彼。
私の1つ上。
彼の名前は神野途弥(かんの みちや)。

全国大会でも見かけた。いや、見かけたというより見つけた。
いつも私の心の中のどこかにいた。

口数が極端に少なく、小さめの背、切れ長の目のキリッとした顔つきは子どもの頃と変わっていない。

途弥と最後に話したのは小学4年生のころ。中学、高校とは学校も別で会うこともなかった。同じ大学だと知ったのも入学式の日にクラブやサークルの紹介で陸上部の名簿を見ていた時だった。

一人、20分くらい壁の影から練習を見て帰った。