胸ぐらでも掴むのかってぐらいに強く引っ張られた彼の手から私の手が滑り落ちた。
だけど、そんな事お構いなしに、軽ーくかわすこの人は、あくびをしながら緩く答えた。



「え?あれ?ダメだった??」



悪気なんてこれっぽっちも無いみたいに、無邪気に笑って見せる。
それからおっかしーなーとでも言いたそうに頭をかく。
本当、なんでこんなところ居るんだ私。



「はぁ?その台詞、いつも言ってん…「トシ、別にいいじゃないか。それとも何か…ダメな理由でもあるのか?」



途端に割り込むようにそれを促す。
その途端に、さっきまで怒ってた人は、少し困ったような顔を見せた。
だけどやっぱり譲れないらしい。



「間者だったらどーすんだ?分かってんのか?近藤さん……」


「土方くん、そう焦らずとも。
さすがに、彼らも女性を間者にして来ませんよ」


「…けどな」



また、私の分からないレベルで話をされる。
私ここにいない方がいいんじゃないのかな?
てか、返してくれないかな?
だけど、それを察したように、この人は私の目の前にしゃがみ込むと、私に話しかけた。



「なんで君はこんなところまで迷い込んできたんだい?」


「えっとそれは……」



そういいながら、チラリと言い合いをしていた方を見る。
もう解決したのか、さっきまで怒ってた人はそっぽをぷいっと向いていた。
だけど、ふと視線があってしまう。



「てめぇ、何ジロジロ見てんだ?」



途端に怒られてしまった。
思いっきりにらまれる。



「あの……その、私今日転校してきて…その、職員室の場所が…分からなくて……迷っちゃって……」



怒られたのと恥ずかしいので、何と無く下を向いてしまう。
だけど、何も声が帰ってこないのに不安になる。



「……それ、明日じゃないでしょうか?」



そういったのは、この男の人を止めてた内の1人だった。