目の前の青年は少し困った様に笑い、笑顔のまま、私に一度だけ頭を下げスタスタと歩いて、廊下の向こうに消えてしまった。


目の前にはその青年のせいで見えなくなっていた、机とソファーと三人の男が現れる。
思い思いの格好で、全くと言っていいほどの統一感の無さだ。
唯一の共通点は、みんな私の方を見てる事。



「ほらほら、入って入って」



後ろから、呑気な声が聞こえてきて私をせかす。
だけど、やめてほしいものだ。
彼らの顔が、明らかに私を歓迎していない(1人を除いて)じゃないの。



「あ?誰だてめぇ……」



明らかに不機嫌そうな声を出すこの怖い人は、さっき私に"おい…"と一言言った人で……
物凄く睨んでくる。
さっきの事を思い出して、ぶるりと身震いした。



「トシやめないか」


「まあまあ、近藤くん。落ち着いて下さい」



他の2人がその怖い人を止めに入る。
私の背中を押してた彼は、私の前に出て手を誘導するように引っ張りながら、またふわりと優しく微笑んだ。



「気にしなくて大丈夫だからね?」


「……はぁ」



気にしなくていいと言われたものの、その視線は明らかに私を見ている訳だし。
むしろ、気にするなと言われた方が無理な話で……
いっそのこと、追い出して頂きたい。
そう、面倒ごとには極力関わりたくないのだ。



「おい、けいきさんよ……てめぇ、どーゆーつもりなんだ?あ?」


「ん?別にどーゆーつもりもなんも無いよ?」



睨まれてるにも関わらず、私の手を引く彼は、手を離してくれそうにない。
視界の隅っこでは、ガタイのいい優しそうな男の人がこの人を止めようとしてくれている。


そしてそのまま、目の前にある、こげ茶色のソファーにちょこんと座らされる。


それと同時に、その怖い人が私の手を引っ張る彼に挑発でもするように、低くうなった。



「だから、なんでその女を、この部屋に入れてんだ?って聞いてんだよ」