「私は、名の知れた料理人に
なるのが夢でした。
小さいながらも店を持ち、
そこそこの人気もありました。

…しかし年月が経つにつれ、
お客さんは減りました。
なんとか対策しようと、
新メニューを出したり
宣伝をしてみたり。
しかし、お客さんは減る一方。
お店も毎月大赤字。
おかげでお店の壁や内装も
古いまんまで、余計にお客も
来やしません。

…もう、お店を続けても
いけそうにありません。

しかし、諦めたくない!
私の料理の腕は確かだ!
自信もある!お客さんが来て
食べてくれさえすれば
きっと、きっと…!!!」



俺は驚いた。
この人、こんなに話せたんだ。

倉ヶ市さんは続けた。


「この世界のどこかに、
幻のスパイスがあると
聞きました。
それはもう素晴らしいもので
料理の隠し味にはこの上ない
ものだと。

それを使えば宣伝になるし
味だって嘘をつかない。
私はまた、あの頃みたいに
お客さんの笑顔の中、
料理を振る舞える…!!」

「お願いです!
幻のスパイスを、
見つけてきてください!」



俺はキトを見た。
目がキラキラとしている。

いつもの、あの目だ。

そうでしょうよ、
幻、なんて言われちゃえばね。