「返すよ。奈々に掛けてくれてありがとうな」


マリアがそっと紙袋に手を伸ばして中から取り出されたのは…黒いライダースジャケット。

彼女はそれをジッと見つめていたが、僅かながら眉間にシワが寄っている。


「…何故、"黒のライダース"を着ている?」


大和さんの質問に返答は無かった。


自身が着ていたジャケットを脱いで紙袋にしまうと、ライダースジャケットを代わりに羽織る。


その様は…闇夜を舞う"マリア"の有るべき姿そのもの。

「おぉ…!」と声を漏らすやつもいた。


「…確かに受けとった」


立ち上がり帰ろうと歩み始めた彼女に「待て」と止めたのは大和さん。


「お前はいつまでそうしてるつもりだ?」


最初はその言葉の意味が分からなかった。

マリアも歩みを止めない…まるで聞こえていないかのように。


「堂島」


大和さんのその言葉に歩みを止めて振り返ったマリアの顔は…


それまで無表情だったその顔は…


今までにない程、怒りに満ちた顔だった――…。