「奈々」

"後で説教だからな"

言わずとも、目付きで分かるようで「ごめんなさい」と小さく俯いていた。


「はぁ‥無事だったから良かったものの‥まぁいい。とりあえず今日はゆっくり休もう」


今の状況で妹を怒るのも、酷ってものだ。
未遂でも、怖い思いをしたのも事実。
今は労るのが優先だ。


「あっ‥どうしよう‥」

「どうした?」

「ジャケット、掛けてくれたの‥返しそびれちゃった」


あぁ、そうか。
彼女のジャケットは妹に掛けられたままだった。
名前も分からない。


「困ったな。名前も連絡先も何も聞けなかったからな」

さて、どうしたものか。
ジャケットだけでは、手掛かりもあったものじゃない。


そこで今まで黙っていた後輩の仁が神妙な顔付きで「大和さん‥」と呟いた。