その女の方に目を向けると‥目を張るくらいに綺麗な女だった。

表情はない。
ただ俺達兄妹の成り行きを見ていた。
黒く長い髪の毛は暗闇の中でも、艶めいていた。
こんなにも華奢な体で男達を‥?


「あ、あぁ‥その、ありがとう。君のお陰で妹が助かった」


女は平然と「別に」、それだけ言うと立ち去ろとすると、奈々の「あの‥!!」という声でそれを引き止めた。


「ありがとうございます‥本当にありがとうございました‥」

「‥俺からも礼を言う。本当にありがとう」

俺達二人は頭を女に向かって下げる。
だけど返答はない。
不思議に思って顔を上げると、女はジッとこちらを見ていた。


「‥あの‥?」


「大した事はしてない」


やはり無表情だった。
だけど、その目は少し細められ優しい目そのもの。


「お礼をさせてくれないか?」


「大した事はしてないから」


女はそういうと有無を言わさないかのように、立ち去ってしまった。
俺達は呆然とし、ただその後ろ姿を見つめていた。


「不謹慎だけど‥凄く綺麗な人だね‥」


「あ?あぁ‥」


何だろうな。
どこかで見たことあるような‥。
顔とかじゃなくて纏っている雰囲気が、どこかで感じたことがある。
だけど分からない。

でもそれよりも――