「引っ込み思案だった花乃が、よく頑張ってたよね」


「…だもん」


「ふっ、そうだね。
でも、僕は引っ込み思案で泣き虫な花乃が大好きだよ」


ほら、桜ちゃんには分かっちゃうんだ。

『引っ込み思案だった』じゃなくて『引っ込み思案だもん』なの。


あたしが何を言いたかったのか、すぐに拾ってくれる。



「…桜ちゃん……あたし…どうしたら良いの…?」



「まずは、温泉によく浸かって、荒れたお肌を治すこと。今はそんなに忙しくないし、ゆっくりしたらいいよ」


うっ…ここ最近、ろくにごはんも食べずに泣いてばっかりだったから、いままでに無いくらいお肌は荒れ荒れ。


美肌の湯に頼ろう…

そう思って桜ちゃんの腕の中で、もぞもぞと向きを変えると、パチャパチャと顔にお湯をかけた。


桜ちゃんはそれを見て、声を出さずに笑っている。



桜ちゃんが居てくれて良かった。
桜ちゃんが居たから、あたしは帰ってこれたんだと思う。

桜ちゃんが迎えに来てくれなかったら
弱虫で泣き虫なあたしは、帰ってくることも出来ずに、都会の雑踏の中でひたすら泣いていただけだったかもしれない。