「…心配…したんだよ」
あたしが居るのは腕の中、優しくて暖かい桜ちゃんの腕の中だった。
「花乃…花乃の携帯って役立たず……」
「ぁ……」
そう言えば部屋に置きっぱなしになっている筈…
あたしの携帯は、携帯じゃなくて基本的に固定電話?と化している。
「…どこ行ってたんだよ」
「裏山に……ちょっと一人になりたくて…」
「花乃…もっと他のやり方にして。
武さんが最初に、花乃がいないって慌ててたんだよ」
武さんが…?
あぁ、あたしにごはんを食べさせようと、部屋に来てくれたんだね。
桜ちゃんに抱き締められている事で、改めて自分の体が冷えきっていたんだと実感した。
花冷えかな…桜が咲きだしたし……
「おーい、武さん達には見つかったって伝えてきたぞぉ?」
「あ、ありがと」
いつの間にか消えていた知花さまは、知らせに行ってくれてたみたい。
戻ってくると、あたしの頭をクシャッと撫でて微笑んだ。
「あんまり心配かけんなよぉ?」
「…ごめんなさい」
この手で桜ちゃんに触れるんだ…
複雑な思いが胸を満たすけれど、心配して探してくれていたのも事実なようで、取り合えず素直に頷いた。
「さぁ、風呂でも入るか」
「そうだね、花乃めっちゃ冷えてるし」
桜ちゃんに促されて帰る道すがら、あの人の事を言いそびれたなと思ったけれど
でも…なんて説明したら良いのか分からないし、取り合えず心にしまっておくことにした。