しばらく歩いたところで、ペタリと地べたに座ってみた。
濡れている訳ではないけれど、ひんやりと冷気が上がってくる。
誰も聞いていないから声を出して泣こうと思った。
思ったのに……
泣く時はいつも声を殺していたから、声は結局出てこなくて、ひたすら涙ばかりがこぼれ続けた。
木々のざわめきが、なんだか耳に心地よい。
ただ泣き続けて、気が付くと黄昏時から、月明かりの綺麗な夜になっていた。
でも、いくら泣いても声には出て来なくて、あたしが自主的に声を出せるのは歌う時だけなんだと再確認した。
…歌ってみようかな……
桜ちゃんに、もう歌わないと宣言してから、一度も歌を歌っていない。
ふらりと立ち上がると、もう少し奥の方へと足を進めた。
いきなり開けた目の前の景色に驚くと、そこには小さな広場があって、自然に出来たであろうステージがあたしを呼んでいた。