ゆっくりと引き寄せられて、那月さんの腕の中にぽすんと収まった。
やっぱりあたしはここが一番落ち着ける場所なんだ。
ドキドキも、するんだけど……
那月さんのくちなしの香りを吸い込んで、ギュッと着流しを掴んですり寄った。
那月さんの手が優しく頭を撫でてくれる。
「那月さん……あのね、あたし知花さまと桜ちゃんに背中押して貰ったの」
突然そんな事を言うあたしの髪を、長い指でゆっくりすきながら微笑んでいる。
「たまには役に立つんですね。今度来た時は蹴飛ばさないであげましょう」
那月さん……それご褒美になってないよ?
「それでね、桜ちゃんが那月さんの所に行ってみなって言ってくれたの」
「おやおや、明日は槍が降るんじゃないですか?」
「フフッ、知花さまはねぇ……言わない」
「花乃……そこまで言ってそれは反則じゃないですか?」
フフッ、内緒。
だって、あたしの口から言えないでしょ?
『なっちゃんは、間違いなく花乃ちゃんを愛してるよ』だなんて。