「結婚式って……?」
「花乃に、ウエディングドレスを……と思いまして……着たいんでしょう?」
なんで知ってるの?
って言うのは、那月さんには愚問なのかも知れないけれど、一度もそんな話はした事がない。
小さい時に、絵本で見たお姫様のドレスを着たいと駄々をこねたのを覚えている。
それを宥める為にか、お母さんが大きくなって大好きな人と結婚する時に着れるのよって言ってくれたんだ。
それをずっと夢見ていたけれど……
月守旅館の跡取りになったあたしには、白無垢で神前の挙式しか出来ないんだと諦めてたの。
「花乃の、ドレス姿を見たいんですよ」
那月さんは知ってたんだね?
柔らかく微笑む那月さんに思いっきり抱き付いて、抱き締め返してくれる腕の中で小さくありがとうと言った。
まだ何も決まっていないのに、那月さんはこうやって先の事を考えてくれている。
あたしが足元を見てぐずぐずしている間に、那月さんはちゃんと明日を見てくれていたんだ。
「でも……那月さんの袴も見たいかも……」
「それは嬉しいですね。それも着たら良いんです。それに披露宴は月守旅館でするんでしょう?ならその時は白無垢の方がしっくり来ると思いますよ」
でも、白タキシードも見てみたい……
きっと、両方とも素敵に着こなしちゃうんだろうね?