更に近寄って器を見比べると、驚く事に文字の位置も形も大きさも、向日葵の細かい所まで判で押したように一緒だった。
「これ……本当に手書き?」
いやね?明らかに筆で書かれてるし、一つだけを見たら手書きだって分かるよ?
でもね、全部並べると違和感あるくらい一緒なの。
「えぇ、お陰さまで当分向日葵は見たくないですし、ひなこって人にあったら条件反射で逃げそうですけどね」
そう言って疲れたように首を回す那月さんの目の下には、うっすらと隈が出来ていてこの仕事の厄介さを物語っていた。
「ごめんなさい……」
そんな大変な時に、勘違いで焼きもち妬いたりして……
結局おにぎりも差し入れ出来なくて、また頬の線が鋭くなった那月さんを見つめながら、ほとほと自分が嫌になった。
「良いんですよ。寝言でうなされた私が悪いんですし、元を辿ればこんな面倒な仕事を引き受けたのが悪いですから。今度こんな仕事を依頼されたら、量産を生業にしている製陶所でも紹介します。どうも性に合いません」
「今回は何で引き受けたの?」
「それは……まぁ、なかなか魅力的な額でしたので」
決まり悪げに髪をかき上げる那月さんを、ポカンと間抜け面で眺めてしまった。
……直ぐに口は閉じたけどね。
「……那月さんがそんな理由で、仕事を引き受けるなんて思わなかった……」
「私も人間ですからね?
それに、先の事を考えると結婚式には貯金を切り崩さない方が良いのかと……」
「えっ?」
慌てて口元を押さえた那月さんは、珍しく目を泳がせている。
那月さんでも、口が滑る事があるんだ……寝言以外で。