『花乃ちゃん、ゆっくり息を吸ってみな』
不意に聞こえてきたのは知花さまの声で、言われるままにゆっくり深呼吸した。
少し息の乱れが落ち着いたところで、また知花さまの声がする。
『花乃ちゃん、大丈夫かぁ?
あのさぁ花乃ちゃんもなっちゃんも、いまいち相手を信じきれてねぇよなぁ?』
「ぇ……」
『二人ともコンプレックスを抱えてるってのは知ってる。直ぐに自分に自信を持てなんて言わねぇから。相手を少し信じてやろう』
「……那月さんを……」
『そうだ。なっちゃんが花乃ちゃんを裏切った事があったかぁ?ねぇだろ?』
「……うん」
『なっちゃんは、間違いなく花乃ちゃんを愛してるよ。何があったのか知らねぇけど、直接話しゃあ解決する事じゃあねぇのか?』
ストンと心の中に、知花さまの言葉が落ち着いた。
あたし……疑ってばっかりだ……
「……那月さん……あたしに愛想つきてないかな?」
『大丈夫。今頃寝れなくてあの黒髪を振り乱して、土間をグルグル歩いてんじゃねぇかなぁ』
「……想像できない……」
『そうかぁ?確認してみな』
『花乃、僕だけど。癪だけどさ、十夢が言ってる事は確かだと思うよ』
急にまた桜ちゃんの声がして、行ってみなと背中を押された。