「なぁ、なっちゃん……如月窯の名は残すんだろぉ?」


「えぇ、また名字が変わるだけですね」


「また……?」



またって事は前にも変わったの?

不思議になって、那月さんの顔を見上げた。

濡れた髪を拭く那月さんは、あたしよりよっぽど艶っぽいと思う。



「えぇ、実は私は十夢のお祖父さんの所に養子に入ってるんですよ」


「俺の母方のじいちゃんだから、俺は元々如月じゃねぇんだよ」


「……月守になってもいいの?」



わざわざ如月になったのに、月守に婿入りしてしまって、おじいは怒らないだろうか……

不安になって思わず下を向いてしまったあたしの頭を、そっと撫でながら那月さんが言った。



「私が両親と上手くいって無かったので、師匠が如月にしてくれたってだけなんです。ですから、窯を守れば師匠も怒らないと思います。……月守になっても良いですか?」


「おじい……嫌な気持ちにならないかな?」


「なりませんよ。お前が結婚出来るのかっ!って、でかしたぞっ!ってどぶろくでも出してきますよ」



おじいを思い出したら、少し切なくなった。

だって、知花さまと那月さんが来てから如月窯から足が遠退いてしまって、そんなに顔も見せないうちに逝ってしまったから……

もっと…遊びに来ておけば良かったなぁ……



「花乃に、そう思って貰えたらそれだけで師匠は喜びますよ」


「……かなぁ」