もちろん、相手は知花さま。……と、桜ちゃん。


他に、この家に無断で入る勇気がある人は居ないと思う。



「おかえり~、おぉっ!?なんで二人ともずぶ濡れなんだぁ?」


「おかえり。早くお風呂に入ってきたら?」



畳の上に長々と寝そべるのは知花さま。

桜ちゃんは、奥から髪を拭きながら出てきた。
……入浴済みですか。



「……なんで、ここに要らぬ物が有るんでしょう?」


「てか、なっちゃん無用心だぞぉ?鍵くらい掛けとかねぇと不審者とか入るだろぉ?」


「……不審者の分際で、何をのたまってるんですか?」



いまいち噛み合ってないような空気は、一先ず無視すると致しましょう。

あたしは、火花を散らす二人の隣をすり抜けて、桜ちゃんの隣も通りすぎてお風呂に向かった。

まぁ、火花を散らすと言っても、那月さんが一方的に敵意剥き出しなだけなんだけど。



「花乃、着替えは?」


「ん~、大丈夫借りるから」



桜ちゃんは、あの二人のやり取りには参加しないつもりみたい。

たまたま着替えをみんな持って帰ってしまってたから、適当に那月さんの服を借りる事にした。