この外れにある屋台は、どうも金平糖屋さんみたい。

それも、瓶に入った金平糖のみを扱うお店。



「お話しするのもいいですけど、早くお風呂にでも入って風邪を引かないようにしなさいな?」


ふんわり笑うおばあ様に、外泊許可を頂いたみたいです。

だって、あたしの手にそっと金平糖の瓶を持たせると、ちっちゃく手を振ってるんだもん。


お知り合いらしい金平糖屋さんも、おまけだともう1つ持たせてくれた。



お礼を言って、びしょ濡れであんまり人目に付きたくないあたし達は、そのまま如月窯に向かって小道を登った。



振り返ると、柔らかく微笑むおばあ様と、気難しげな金平糖売りのおじいさんが見えた。

二人の間には、あたしの知らない歴史があるようで、それ以上触れてはいけない気がした。



「さて、帰ったらまずお風呂ですね」


「うん……ちょっと寒くなってきた」



何となく答えたあたしの返事に、那月さんは慌てたように歩く速度を早めた。

……あんまり早いと着いてけないんですけど……

なんせ、濡れた浴衣っていうのは思った以上に足にまつわりついて、歩き難い事この上ない。