あれ?なんで落ち込んでしまったんだろう?
「那月さん器用だから、これも作ってくれたのかなって」
「……すみません、他の人が作った物を花乃がいつも身につけるのが嫌で……」
「ねぇ、那月さん勘違いしてない?那月さんが作ってくれたなら嬉しいなって思ったんだけど……」
突然ギュッと抱き締められて、一瞬息が止まるかと思った。
だって、那月さん力強いんだもん……
黙ったままあたしを抱き締める那月さんの鼓動がとても早くて、あたしの体温も上がってしまう。
「大切にします」
婚約なら良いって言って頂いてますし。
甘くあたしの耳元で囁く言葉に、今日の昼間に現れた那月さんが浮かんだ。
「今日おばあ様の所に行ったのって……?」
「えぇ、結婚はまだ早いけど、婚約なら良いですよって言って下さいました」
「でも……あたしと結婚したら月守にって言われなかった?」
「言われましたよ?名前に月が2つってのは変わらないですね」
「いいの?如月の名を継がなくて……」
「あぁ、窯の名前は如月窯のままにさして貰えれば、師匠も文句は言わないと思いますよ」
あんまりあっさり言うから、そんなものなのかと拍子抜けてしまった。
だって、婿には入るのは嫌だって言われたらどうしようって心配だったんだもん。