「……フフッ」
「なに笑ってるんですか」
ずぶ濡れで那月さんにしがみついたまま、何だか笑いが止まらない。
やれやれと呆れた風の那月さんは、水を含んで重くなってるだろう浴衣姿のあたしを軽々と抱き上げた。
「返事は頂けないんですか?」
「フフッ……こんなずぶ濡れで……」
「なにが花乃のツボに入ったのか分かりませんけれど、私は真剣ですよ」
「那月さんの隣に居させて下さい」
花火の終わった夜空に、輝くのはお月様。
柔らかなその光に照らされて微笑んだ那月さんは、一際輝いて見えた。
岸に上がって、二人して水を滴らせながら一頻り笑い転げる。
「ククッ……あの時の花乃の顔が……」
「しょうがないじゃない!だって飛んじゃったんだもん……」
「まさか花乃まで飛ぶとは……思わなかったですけどね」
「フフッ……でもちゃんと落とさなかったもん」
「花乃と私が落ちましたけどね?」
那月さんに貰った簪は、よく見るとくちなしの花の回りを三日月が囲っているようなデザインだった。
銀色の平打簪を、そっと指先で撫でるとそれだけで嬉しくなる。
「これも那月さんが作ったの?」
「やっぱり素人仕事ですよね……」