「花乃、まだ早いかも知れないですが、予約してもいいですか?」
「予約……?」
なんの事か分からなくて首を傾げるあたしの左手を取って、そっと薬指に口付けた。
「指輪も考えたんです。でも、花乃の仕事柄付けたままは無理でしょう?なら、いつでも付けられる物をと思いまして……」
途中から自信なさげに、まだ那月さん自身の手の上にある簪を見つめた。
この簪は、婚約指輪代わりって事?
その手の上に、そっと自分の手を重ねて那月さんを見上げた。
あたしが返事をしようと口を開けた途端、さっきので最後だと思っていた花火が打ち上がった。
あっ……!?
驚いて体が飛び跳ねた拍子に、簪がピョンっと川面に向かって飛んでしまった。
必死に手を伸ばすと、指先で簪をとらえる。
ホッとしたのもつかの間、あたしを支えようと手を伸ばした那月さんを道連れに、派手な水飛沫を上げた。
「何をしてるんですか!」
「ごめんなさい……でもちゃんと取れたよ?」
びしょ濡れで川の中に立つ那月さんにギュッと抱き付いた。
だって……あたしは足届かないんだもん……
「ふぅ……危なっかしい所は変わりませんね?」
「危なっかしいあたしで良いの?」
「花乃がいいんです」