気を付けてお湯を入れると、急須の蓋を閉めた。
蓋の真ん中には、丸くなって寝ている子猫が付いている。
赤茶色の斑に塗られているから、楓ちゃんでは無いみたい。
「このニャンコにモデルは居るの?」
「たぶん、昔居着いていた野良猫だと思いますよ」
……思いますよ?
「それを作ったのは十夢ですから、今度聞いてみたら良いんじゃないですか?」
「えっ?」
あんななりして、こんな可愛らしい物を作るの?
驚いたあたしは、改めてまじまじと急須を眺めてしまった。
「十夢は繊細で可愛らしい物を作りますね。私のがよっぽど土っぽい物を作ります」
「人って……見掛けによらないんだねぇ……」
「そうですね。小さくて可愛い物を愛でるのが好きなんだと思いますよ。桜介や瑠璃さんみたいな」
確かに。
二人とも可愛らしくて、桜ちゃんも男性にしては小さめだ。
そんな事言ったら怒られるけど……
「さて、縁側でお茶にしましょうか」
那月さんがお盆を持ってくれたから、あたしは後から着いていくだけ。
楓ちゃんは、いつの間にか何処かへ行ってしまった。
……お散歩かな?
並んで座ると、那月さんの髪が濡れている事が気になった。
だってね?
ただ、髪が濡れてるだけなのに、色気が駄々漏れているんだもん。
「花乃、何をしてるんですか?」